"[集中 - 散漫] " / " [paying attention - distraction] "
(project as "Yuganda-isu", my artist duo with Hochoul Lee)
mixed-media installation, actions, fogger maker, found object
2019
広島県尾道市。険しい坂の上に建物が並ぶ。
尾道駅を出てすぐ、山の中にある、急な階段を十分程登ると、使われていない大きな旅館があった。
その旅館は、再利用するために市のNPO団体による改修工事が行われていた。その工事中の旅館の大広間に、体験型のインスタレーションを出現させた。展示空間はオブジェクト群と、2つのパフォーマンス…というよりは(隣の工事現場の作業とさほど変わりない)単純作業をする二人の男、また、鑑賞者がタバコのように「霧を吸う」装置とソファで構成されている。展示で使ったオブジェクト、大きな家具や単純作業に使った小物などは、全て尾道に住んでいる人が要らなくなり、譲って頂いたものを使用した。
鑑賞者はソファに腰掛け、水蒸気の冷たい霧を吸いながら展示空間や作業を行う男達を鑑賞する。
単純作業を行う男達のうち、一人はオブジェクトのテクスチャ、例えば錆びた金槌の錆、ガラス瓶の中にある気泡、地球儀の表面の傷に、数字を打ち続けていく。
もう一人はビニールによって仕切られたスペースで、家財などのオブジェクトを丸ノコなどで破片へと解体し続ける。ビニールのパーテーションには、片手が入る程度の穴が空いており、その穴に通るように、机や棚、靴、傘、襖、梯子、本などをひたすら細切れに切り刻み続ける。
それらの要素を囲むように、機能を失った、もしくは一見使得なそうな日用品が散在する。焼かれてただれたトランペット。服を着て床に転がるスーツケース。温めることはできないが、寝返りを打つストーブ。ブルースクリーンだけ映せる、テレビ。羽根はないが、首を振る扇風機。
ここでは、共有される固定的な一つの時間というものはなく、それぞれの出来事はそれぞれの時間軸の中で生じ、それが一つの場所で起きている。そこでは、ただそこになんとなく存在することが肯定される。鑑賞者はこの全体像を実感するだけである。
↓オブジェクトのテクスチャ、例えば錆びた金槌の錆、ガラス瓶の中にある気泡、地球儀の表面の傷に、数字を打ち続けていく。
↓家財などのオブジェクトを、丸ノコなどで破片へと解体し続ける。